カントスマイルは矯正で治る?
「笑うと歯が斜めに見える」

写真を撮ったときや鏡の前で笑ったとき、
「歯並びが左右で傾いて見える」
「口角は同じ高さなのに、歯のラインだけ斜めに感じる」
そう感じたことはありませんか。
このような見え方の背景にあるのが カントスマイル です。
カントスマイルとは?
歯科矯正でいう「カント(cant)」とは、咬合平面(上下の歯が噛み合う基準面)が水平から傾いている状態 を指します。

「カント」の基準
- 1mm未満の左右差:視覚的にほぼ気づかれない
- 2mm前後の高低差:笑ったとき・写真で違和感を覚える人が増える
- 3mm以上の高低差:第三者からも「歪み」として認識されやすい
※この「mm」は左右の犬歯〜第一大臼歯付近の垂直的高低差 を指します。
なぜスマイル時に目立つのか
安静時(口を閉じた状態)では目立たなくても、笑った瞬間にカントが強調される理由は以下です。
- 上唇が 平均6〜10mm 挙上する
- 歯冠露出量が左右で不均等になる
- 歯列の傾きが「水平基準」と比較されやすくなる
つまり、カントは“笑顔で初めて問題化することが多い”構造的ズレ です。

カントスマイルの原因は3つに分けられる
カントスマイルは「見え方」ではなく原因構造で分けることが最重要 です。
① 歯の位置によるカント(歯性カント)
最も多いタイプです。
具体例
- 片側の奥歯が 1〜2mm挺出 している
- 反対側の奥歯が 低位に位置 している
- 片噛み習慣により、左右で歯の高さが異なる
特徴
- 骨格はほぼ左右対称
- 正面顔貌に大きな非対称はない
- 矯正治療でのコントロールが比較的可能
👉 全カントスマイル症例の約60〜70% がこの範囲に入ります。
② 噛み合わせ(咬合平面)の傾き
歯列全体が斜めに傾いているタイプです。
具体例
- 上顎歯列全体が右下がり/左下がり
- 奥歯の咬合高径が左右で異なる
- 成長期の顎位偏位が固定化
数字的特徴
- 左右差 2〜4mm 程度
- 犬歯〜臼歯まで連続した傾き
👉
このタイプでは、部分矯正では不十分 になることが多く、全顎的な設計が必要です。
③ 骨格性カント(上顎骨の左右差)
最も治療判断が慎重になるタイプです。
特徴
- 上顎骨そのものが傾斜
- 顔貌に左右非対称を伴うことが多い
- カント量 4mm以上 のことが多い
👉
この場合、矯正単独での完全修正は難しいケース も存在します。
カントスマイルは矯正でどこまで治るのか
結論から言うと、
「原因と傾き量によって可能範囲が明確に分かれる」
これが現実です。
矯正で対応しやすい範囲(数値基準)
| 条件 | 矯正対応 |
|---|---|
| 歯性カント | ◎ |
| 傾き量 1〜3mm | ◎ |
| 骨格左右差なし | ◎ |
| 咬合高径差が局所的 | ◎ |
使用される主な手法
- マルチブラケット装置
- アンカースクリュー(TAD)
- 垂直的歯の移動(圧下・挺出)
👉
アンカースクリュー使用率は約70〜80%
(中等度以上のカント症例)
矯正だけでは限界が出やすい範囲
| 条件 | 注意 |
|---|---|
| 骨格性カント | △ |
| 傾き量 4mm以上 | △ |
| 顔面非対称が顕著 | △ |
この場合、
- 矯正で「見え方の改善」は可能
- 完全な水平化は困難 なことがある
👉
「どこまでをゴールにするか」の共有が重要です。
「カントがある=外科矯正が必要」ではない
これは非常に多い誤解です。
外科矯正が検討される目安
- 骨格性カント
- 傾き量 5mm以上
- 顔貌非対称が主訴
- 咬合機能にも影響が出ている
👉
全カント症例のうち、外科矯正が第一選択になるのは約10〜15%程度
というのが臨床実感です。
診断で必ず確認すべき5項目
- 正面安静時とスマイル時の比較
- 犬歯・第一大臼歯部の高低差(mm)
- 咬合平面と瞳孔線・口角線の関係
- CTによる上顎骨の左右差
- 咬合機能(片噛み・顎偏位)
👉
写真1枚だけでの判断は危険 です。
マウスピース矯正でカントは治る?
結論は「条件付き」です。
対応可能な条件
- 歯性カント
- 傾き量 1〜2mm以内
- 臼歯の大きな垂直移動が不要
限界が出やすい条件
- 3mm以上の圧下・挺出
- 臼歯部主体のカント
- 咬合平面全体の傾き
👉
マウスピース矯正は
“設計通り動けば成立する治療”
であるため、
難易度評価が非常に重要です。
カントスマイル矯正で後悔しやすいポイント
① 見た目だけを優先した結果、噛み合わせが不安定
- 見た目改善 ≠ 機能改善
- 治療後に違和感が残るケース
② 完全対称を目指しすぎる
- 人の顔は元々左右非対称
- 0mmを目指すことで不自然になることも
③ ゴール設定が共有されていない
- 「どこまで治すか」を曖昧にしたまま治療開始
よくある質問(FAQ)
Q. 写真で気になる程度でも相談していい?
→ はい。1〜2mm差でも、本人の満足度には大きく影響します。
Q. 治療期間はどれくらい?
→ 軽度:12〜18か月
中等度:24〜30か月 が目安です。
Q. 矯正後に戻ることは?
→ 垂直的移動は後戻りしやすいため、
保定設計が非常に重要 です。
まとめ|カントスマイル矯正で大切な判断軸
- カントスマイルは「原因次第」
- 矯正で対応できるケースは多い
- 重要なのは
治療法選択ではなく、診断と設計
「自分のカントはどのタイプなのか」
そこを整理することが、
後悔しない矯正治療への第一歩です。