歯科 – ボトックス
ボトックスとは
ボトックスとは、アメリカの会社のボツリヌストキシン製剤の商品名です。ボツリヌス治療において代表的な存在であるため、「ボトックス」という名が流通しています。
ボトックスは、ボツリヌス菌という細菌の一種から抽出されたタンパク質の一種です。このボトックスには、筋肉の収縮を促す神経伝達物質であるアセチルコリンの働きを弱める作用があります。
美容外科や美容皮膚科では、ボトックスのこの働きを利用することで、シワ取りなどの処置を行っています。いわゆるボトックス注射です。
歯科領域においてもボトックス注射は行われていますが、シワ取りなど美容目的ではなく口腔内の問題に対する処置として活用されています。
歯科領域におけるボトックス注射の対象
症状の原因となっている筋肉にボトックス注射を打つことで、筋肉の過剰な働きを抑え症状の緩和を期待します。
どこの歯科医院でもボトックス注射を取り扱っているわけではありませんので、検討している場合はHPなどで確認または問い合わせをしましょう。
おおまかな対象となるのは以下のような症状です。(※対象範囲は歯科医院によります)
歯ぎしり、くいしばり
歯ぎしりやくいしばりは、日中の集中しているときや就寝中に無意識にしていることが多々あります。
歯ぎしりやくいしばりをしたあとに、顎が痛い、だるいと実感したことのある方もいるのではないでしょうか。それもそのはず、この歯ぎしりや食いしばりの時の負荷は体重の1.5倍ほどとも言われています。
その結果
- 歯が欠ける
- 歯にヒビが入る
- 咬耗(歯の噛む面が削れる)
- 詰め物が欠ける
- 詰め物が外れる
- 歯周病の悪化
- 顎関節症の誘発、悪化
- 首や肩の凝り
- 頭痛
- 咬筋の発達によるエラ張り
などが起きる可能性があります。
顎関節症
顎関節症とは、「顎が痛い」「口が開かない」「顎を動かすと音がする」などの症状のいずれかがある状態(ほかに症状を引き起こす病気がない場合)を指します。
歯ぎしりやくいしばりが原因となることもありますが、心因的な問題や原因不明な場合もあります。
ガミースマイル
ガミースマイルとは、笑ったときに、歯茎が目立ってしまう状態を指します。このことにより歯や歯茎が乾燥しやすい状態になり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
また、笑ったときの見た目を気にしてしまい、心理的負担になっている場合も考えられます。
注意事項
ボトックス注射にはいくつか注意事項が存在します。
- 効果が出るまでに数日~数週間を要します。
- 効果は数か月~半年程度です。ボトックスの効果に期待するならば必要に応じて、定期的に打つ必要があります。
しかし、歯ぎしりやくいしばり、顎関節症などはマウスピースや生活指導による行動変容、ガミースマイルでは歯列矯正や手術などの手段もあります。
必要に応じて処置の併用、使い分けをすることも検討してください。歯科医院で相談することで自分にあった手段を選ぶことができます。 - 一時的な皮下出血や、場合によってはこわばって動かしづらいということが起こる可能性があります。また、妊娠中の方は打てません。
ボトックス注射の費用
ボトックス注射は自費診療です。ボトックス注射を打つ部位や量により価格は異なりますが、1~6万円程度で打つことが可能です。
また、歯科医院で行う場合は美容目的ではなく症状の改善を目的としているので、医療費控除の対象となります。医療費控除の申請を検討している方は、念のため歯科医院で事前に確認をしてから処置に移行すると安心です。
ボトックス注射と聞くと美容外科や美容皮膚科でのシワ取りのイメージがあるかと思いますが、歯科医院でも活用されています。主に歯ぎしりやくいしばりの症状緩和のために使用されています。
歯ぎしりやくいしばりは、簡単には治すことができずに(特効薬や確立した治療法がない)様々な不調をきたすことに繋がります。
継続的な歯ぎしりやくいしばりによって咬筋の肥大化(エラ張り)や顎関節症にも関係してきますので、早めに対処したいものです。
その一つの手段として物理的に筋力を弱めることができるボトックス注射は、無意識・就寝中の歯ぎしり食いしばりの予防手段としては最適といえそうです。
ただし、効果は永続的ではありませんので症状とどう付き合うか、どう改善へと導くかをしっかり話し合う必要があります。