インプラント
インプラントとは
インプラントとは、顎の骨に埋め込む人工歯根のことです。むし歯や歯周病(歯槽膿漏)などによって、失った歯の変わりとなります。
失った歯の場所と同等の場所、つまり顎の骨の中に人工歯根を埋入し、その上に連結部と人工歯をかぶせることで機能を果たしています。
欠損歯を補う治療法としてのインプラントの優位性
歯がなくなると、そこを補う治療法が必要です。歯がなくなったままの状態を放置すると、さまざまな弊害を引き起こすからです。
インプラント治療が確立する前に、用いられていた治療法が「ブリッジ」や「入れ歯」です。ブリッジや入れ歯は、隣接する歯や周囲の歯を固定源とする必要があります。そのため、治療上、健康な歯であっても、削る必要性が出てきます。また、固定源となるということは、欠損分の負担を周りの歯が担うことになり、その歯に今まで以上の継続した負荷がかかることになります。
インプラントは、独立しているので他の歯に影響を与えないばかりか、均等に噛むことが可能なので咀嚼の際の力を分散することが可能です。
インプラントの流れ
1. 術前検査
(通院回数:1~2回)
レントゲンやCTを用いて、どの位置に埋入すべきなのか?骨の厚みや神経との距離などを確認し、より安全な埋入位置を確認します。必要に応じてガイドを作成することもあります。
検査で得た情報を元に、どのくらいの期間が必要かなどの治療計画を立てていきます。
2. 手術
インプラントの手術には一回法と二回法があります。
一回法は文字通りインプラントの手術が一度で済み、二回法は二度の手術を必要としています。
一回法(通院回数の目安:1~3回)
※手術自体1回ですが、抜歯や消毒のための通院が必要です。
- 麻酔をし、埋入場所の歯肉をひらく
- ドリルで歯槽骨(顎の骨)に穴をあける
- あけた穴にインプラントを埋入する
- 縫合
- インプラントと歯槽骨の結合のため3~6カ月待つ
- 麻酔をしてインプラント埋入部位をひらき、インプラントの連結部であるアバットメントを取り付ける
二回法(通院回数:4~6回)
※手術自体は2回だが、抜歯や消毒のための通院が必要
- 麻酔をし、埋入場所の歯肉をひらく
- ドリルで歯槽骨(顎の骨)に穴をあける
- あけた穴にインプラントを埋入する
- 縫合
- インプラントと歯槽骨の結合のため3~6カ月待つ
- 麻酔をしてインプラント埋入部位をひらき、インプラントの連結部であるアバットメントを取り付ける
3. 術後人工歯の型取り・装着
(通院回数:3~6回)
二次手術が終わり歯肉の回復を確認したら型取りをして上部構造(人工歯)を装着します。
インプラントのメリット
自分の歯のように噛める
インプラントは歯槽骨に支えられているので、硬いものも気にすることなく自分の歯のように噛むことが可能です。
周りの歯に負担をかけない、依存しない
インプラントは欠損歯を補う治療法の中で唯一独立した方法です。ブリッジや入れ歯は、隣の歯やほかの歯に負担を欠けてしまいます。
歯槽骨の保存が期待できる
身体の使っていない部分が衰えていくイメージはありますか?歯を支えている歯槽骨も同様に、その箇所に歯がなくなれば機能が衰え痩せていってしまいます。骨が痩せていけば、隣接していた歯の歯槽骨にも影響します。
通常のブラッシングで清掃が可能
場合によってはブラシの種類を変えたり清掃具を追加する場合もありますが、入れ歯のように着脱して清掃したり保管したりする必要がありません。
審美性もかなえる
インプラントのかぶせ物は白い歯を選ぶことが可能です。
インプラントのデメリット
手術が必要
恐らくこの点を不安に思う方が多いかもしれません。局所麻酔でも手術が可能ですが、設備の整っている歯科医院であればセデーション(静脈内鎮静法)をして手術を受けることが可能です。
セデーションは、熟睡まではいかずにウトウトとした状態になり、痛みを感じずに手術を行うことが可能です。
治療期間が長い
インプラントを埋入して、骨との結合を待つだけでも3~6カ月かかります。かぶせ物(人工歯)が入るまでに、トータルで1年ほどかかります。
※患者様が持ち合わせている骨の量や厚み、全身疾患による投薬のコントロールなど患者様の口腔内や条件は異なります。
費用がかかる
インプラントは自費診療なので高額になりがちです。目安としては1本30~50万円が相場です。しかし、状況に応じて骨再生が必要な場合などは追加で費用がかかります。
※インプラントは医療費控除の対象です。
全ての人が選択できるとは限らない
持ち合わせている病気や、歯周病が進行している場合インプラントが選択できない場合があります。
軽度の歯周病であれば歯周治療を終えてから、手術が可能な場合もあります。
料金表
内容 | 料金 |
---|---|
インプラント埋入手術(1本あたり) | ¥275,000 |
上部構造一体型(1本あたり) | ¥275,000 |
サイナスリフト(片側) | ¥220,000 |
ソケットリフト(1本) | ¥11,000 |
骨移植手術 | ¥110,000 |
材料移植① | ¥33,000 |
材料移植② | ¥33,000 |
材料移植③ | ¥33,000 |
CT検査 | ¥16,500 |
インプラントの残存率
厚生労働省が行った調査によると、90~95%のインプラントが10~15年たっても残っているということが分かりました。インプラントの歴史はまだ浅いので、この数値はまた変わってくる可能性もあります。
入れ歯では4~5年、ブリッジでは7~8年の残存率ですからインプラントはこれらよりも長持ちといえます。
インプラントを長持ちさせるためには
インプラントは優れた治療法ですが、完璧ではありません。
インプラント周囲炎は、インプラントを支えている歯肉、歯槽骨に炎症、歯槽骨の吸収が起きることいいます。インプラントに起きる歯周病ということです。
インプラントは、虫歯にはなりませんが、歯槽骨に埋入されているので歯周病に罹患すればインプラントを支えている歯槽骨が溶けだし最悪の場合インプラントの脱離が起きます。
インプラントの土台となる骨が健康でなければ長持ちさせることはできませんので、インプラント治療後も、ご自身での毎日のブラッシングと歯科医院で受ける定期健診が必要です。
定期的にメンテナンスを受けることで、ご自身の歯もインプラントも良好な状態を維持することに繋がります。
インプラントは高額ではあるものの、欠損歯の修復における周りの歯に依存しない唯一の治療法です。且つ、骨に埋入することで歯槽骨の維持にもつながり、単体の歯の機能を取り戻すだけではなく、口腔内全体にとってもメリットのある治療法です。
インプラント自体は人工物なので長持ちは期待できますが、宿主であるご自身の健康状態やメンテナンスが行き届かなければインプラントを口腔内に維持するのは容易ではありません。
インプラントを検討する場合、長い目でみて定期的にメンテナンスにいくことを前提にしておくことをおすすめします。
飲食は人間の生命維持にとって不可欠であり、人生を楽しむための娯楽です。それは健康な身体、もとより健康な歯があってこそです。定期的なメンテナンスは自身の健康を守ること、生きることの喜びに繋がります。